サイトのリニューアルで、AIに要件より先に目的を渡した
このサイトを全面的にリニューアルしました。 作業はほぼすべてClaude Codeに任せ、自分は指示を出して結果を判断する役に回りました。
終わってから、どの指示が一番効いたのかをふりかえっています。 テーマの自作でもポートフォリオの追加でもなく、要件の前に書いた数行の「目的」でした。
目的を先に渡したことで、要件には書いていない設計がいくつも出てきました。 Google Analyticsの計測も、トップページの構成もそうです。 一方で、配色の好みや愛称のように、目的からは導けないものは出てきませんでした。 つまり、目的から演繹できる範囲がAIの担当になり、演繹できない部分だけが自分の判断として残ります。 そうだとすると、自分の仕事は要件を細かく書き下ろすことではなく、目的を具体的に言語化することに移っていきます。 以下、実際に何が出てきて、何が出てこなかったのかを順に書いていきます。
目的を先に、要件をあとに書いた
最初に渡した指示は、目的と要件の2つに分けてあります。 目的として書いたのは、これだけです。
このサイトは佐藤竜也の個人サイトである一方で、彼が個人事業主としてやっているソフトウェア開発の業務委託の契約を呼び込むためのサイトでもある。 この後者の目的のため、訪問者が彼に対して相談したくなるようなアクションを取ることを目指す。
そのあとに、要件を5つ並べました。
- URL構造は維持すること
- 既存のJekyllテーマを使わず、独自にテーマを作ること
- 個人開発を紹介する「ポートフォリオ」を追加すること
- Google Analyticsで問い合わせまでのアクセスを集計できるようにすること
- トップページから問い合わせまで誘導できる導線を設計すること
あわせて「既存の構成やコンテンツにとらわれず、目的のためなら構成を大幅に変えてよい」と伝えています。 要件は満たすべき条件で、目的はその条件が何のためにあるのかの説明です。 この2つを分けて書いたことが、あとから効いてきました。
要件に書いていないものが出てきた
分かりやすいのはGoogle Analyticsです。 自分が書いた要件は「問い合わせまでのアクセスを集計できるようにせよ」の一文だけでした。
出てきたのは、ページビューの集計ではありませんでした。 問い合わせへ誘導するボタンのクリックを、設置場所つきで記録する。 料金表が画面に入ったことを記録する。 フォームへの入力を始めたことを記録する。 そのうえで「トップ → 開発のご相談 → 料金を見た → 問い合わせページ → 入力を始めた」という流れを、GA4のファネルとして見るための設計でした。
「集計する」という要件からは、この設計は出てきません。 「訪問者が相談したくなる」という目的があるから、どこで離脱しているのかを知る必要が生まれます。
トップページも同じでした。 要件には「問い合わせまで誘導できる導線を設計せよ」としか書いていません。 出てきた構成では、ヒーローのすぐ下に「こんなときに、声をかけてください」というセクションが置かれていました。 訪問者が抱えていそうな悩みを4つ並べ、それぞれ対応するサービスへつなぐ作りです。
自分は悩みを並べろとは言っていません。 相談したくなる状態を作るには、まず訪問者に自分ごとだと思ってもらう必要がある。 目的から、そこまで降りてきた結果だと思っています。
目的から導けないことは、外してきた
一方で、外してきたものもあります。
最初に提案された配色はオレンジ系でした。 和紙のような背景に柿色のアクセントで、それ自体は悪くありません。 ですが、技術の判断を任せる相手として見てもらうには少し軽いかなと思いました。 そこで、藍を基調にしたものに変えてもらっています。
ヘッダーの表記もそうです。 最初は本名の「佐藤竜也」が置かれていました。 自分が公に使っている愛称は「さとりゅう」で、noteのアカウント名もドメインもそれに揃えてあります。 これは目的からは導けません。 伝えなければ分からない情報です。
配色の好みも愛称も、目的から演繹できない部分でした。 逆に言えば、目的を先に渡したことで、自分が判断すべきなのはこの種類のことだけになったとも言えます。
自分の仕事はどこに残るのか
今回、自分がやったのは大きく2つでした。
1つは、目的を言葉にすることです。 「相談を呼び込むサイトにしたい」で止めず、「訪問者が相談したくなるアクションを取ることを目指す」まで書きました。 だから、ファネルの設計や悩みのセクションまで降りてきたのだと思います。
もう1つは、目的から導けない判断をすることです。 配色の好み、愛称、どこまでを載せるか。 ここは自分にしか決められません。
要件を細かく書き下ろす作業は、思ったより減りました。 そのぶん、目的をどれだけ具体的に言語化できるかに、成果物の質がかかっているように感じます。
判断のうち、ルールにできたものがあった
目的から導けないものだけが自分の判断として残る、と書きました。 ところが、この記事を書く途中で、その残り方にも差があると気づきました。
最初にAIが書いた下書きは、一人称が「ぼく」でした。 自分は「自分」と書きます。 配色や愛称と同じで、目的からは導けない、伝えなければ分からないことです。
ですが、配色と違って、文体には過去の蓄積がありました。 このブログの128本とnoteの36本を読ませ、癖をルールとして書き出させました。 一人称、1文1行、見出しの型、締め方。 リポジトリに置いてからは、AIが自分でそれに照らして直すようになっています。 この記事も、そのルールで書かれています。
おわりに
目的から導けないものにも、2種類あったことになります。 過去の判断が残っているものは、読ませればルールになります。 残っていないものだけが、その場の判断として戻ってきます。 今回それは、新しい目的に合う配色と、この記事の主張が面白いかどうかでした。 後者は、何度か書き直しになっています。
次にAIに何かを頼むときは、判断を求められるたび「これは過去の自分がもう答えているのではないか」と考えてみたいなぁ、と思っています。