服従の心理 (河出文庫)

服従の心理 (河出文庫)

先日参加したアジャイルジャパン新横浜サテライトで視聴した基調講演の中で、この本が取り上げられていた。 どういった文脈でこの本に触れていたのかは記憶があやふやだったのだが、フラットな組織についての文脈だったと思う。

この本は、人が権威に服従する仕組みを調査する実験について、その実験方法から被験者の記録、分析について、実験を主導したミルグラム本人によって書かれたもの。ミルグラム実験がどういうものかについては、Wikipediaにも掲載されているのでそちらを読んでください。

ja.wikipedia.org

この本を読んでいて思うのは、人間が恐ろしくもたやすく権威の支持に服従してしまうということだ。 ミルグラム実験では、被害者(実際には実験する側である役者)に対して、被験者が電撃を加える。電撃の電圧を上げていくなかで、被害者が実験の中止を求めたり、体調不良を訴える。もし被験者が実験者に対して実験の中断を申し出ても、実験者は継続するように促す。 ここで被験者はどう行動するのか?

これを実験に参加していない人にアンケートを取ると、被害者が申し出た時点で被験者は実験を中止するだろう、と回答する。 特に、大学生、特に心理学を専攻している学生であるほど、より早く中止するだろうと回答している。 しかし、実験結果は、最悪のもので、被験者のほぼ全員が加えられる最大の電圧まで電撃を与え続ける。

支持の内容が非人道的だとわかっていても、責任が権威にあるとして続けてしまう。社会の中で生きるように進化してきた人間として、権威からの支持に従うことで社会の構成員として存在意義を示す傾向にあるとも言われている。

実験の種類もいくつも試されており、服従しないようにするためにはどのようにすればいいのか調査されている。 被害者と被験者との物理的な距離や、権威を持つ実験者の支持の一貫性が崩れた時や被験者を複数にするなど様々なことを試している。 それぞれの実験結果については、この本を実際に読んでみてほしい。

感想

  • 普段の社会にいたら、権威というものはいたるところに現れる。当然、仕事をしている時なんかは「上司と部下」といったものがそこら辺にある。非人道的な指示ですらあっさり服従してしまうのだから、普段の仕事でも無駄とわかっているようなことをあっさりと何も考えずにこなしてしまうのではないだろうか。
  • 上司の指示が必ずしも正しいわけではないし、それは上司が悪いと言って終わりにしてしまうわけにもいかないと個人的には思う。誤りをどこかで訂正するためには、服従に抵抗しなければならない。そのためのヒントがこの実験にあるんじゃないだろうか。
  • マネジメントは、人に働きかけて全体としてうまくやろう、というものだと思うので、人について知らないといけないだろうから心理学から学べることが多そう。

なんだかホラー映画を見ているような感覚で読んでいた気がする。